現在私たちが直面している気候変動など地球規模の問題解決に向け、2015年9月、国連によりSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」17項目が採択されました。
私たち伊と幸は、1931年創業以来、天然繊維「絹」の白生地メーカーとして歩んで参りましたが、絹は生分解性繊維であり地球環境に負荷をかけないことから、今、シルク産業が持続可能な社会を実現するSDGsの達成に不可欠な産業と見直されています。
伊と幸では日々の事業活動を通して、白生地から始まる職人たちの技術を生かし、SDGsの具体的実戦に努めて参ります。
1.国内の養蚕農家と契約。トレーサビリティが明確な「日本の絹」
当社では、絹織物の原料となる繭生産について、1996年から日本国内の養蚕農家と契約しています。良質な繭作りのために、お蚕様を丁寧に育んでもらいたいという気持ちから始まり、「松岡姫」というお蚕様の名前を、繭・生糸から白生地までの統一商標とし今日に至ります。養蚕のための桑畑は、日本の中山間部に広がっており、山野の荒廃を防ぎ、耕作放棄地から日本の豊かな国土を守ることに繋がります。原材料から国産である純日本の絹は、現在日本の絹製品流通量のわずか0.3%ともいわれ大変希少ですが、まだゼロではありません。日本の文化を象徴するきものの原材料である繭の生産背景を、日本国内に残して参ります。
2.「着物をインテリアへ。」アップサイクルサービスを展開
当社では、絹織物の応用製品として、2012年から内装資材やインテリア製品を企画制作しております。絹の生地を合わせガラスの中に封入した「絹ガラス」は、絹の劣化を防ぎ耐久性を上げることができ、日常の家具として使用可能です。例えば、想いの詰まった大切な着物で、今ではどうする事も出来ず箪笥にしまったままの着物…。それらの着物をお預かりさせて頂き、ガラステーブルへとアップサイクルしる「KIMONO UPCYCLEサービス」をご案内しています。デザインが古くなってしまった着物も金彩加工を少し加えるだけで見違えるほど華やかになります。インテリア事業で培ったノウハウを基に、生地に合わせてアレンジのご提案をさせて頂きます。
3.生産工程などで発生する端切れを新商品開発のサンプル制作へ活用
着物一枚を作る一反の反物に、必要な繭量は3000粒です。袷仕立ての和装一揃いに使われる繭は10000粒です。それだけのお蚕様の命から誕生した絹織物です。しかし、着物が出来上がるまでの生産工程では、どうしても端切れが発生し、これまでは破棄をしてしまうことも少なくありませんでした。
それらを無駄にせず有効活用すべく、小物雑貨の新商品開発のサンプル利用や、生地見本として大切に保管し、お客様へのご提案資材として活用しております。裁断された短い端切れであっても、生地そのもののクオリティは拘り抜いて製織・染色された美しい資産です。端切れをつかった名刺入れ制作のワークショップを開催するなどして、お客様に絹織物に触れ、お楽しみいただく機会を作っております。
4.暮らしに寄り添うシルク製品で健康的な毎日を提案
これまで汎用的に使われてきた化学繊維は、洗濯の都度、マイクロプラスチック排出につながることが指摘され、また大量廃棄による環境負荷も社会問題化しています。天然繊維である「絹」は、生分解性があり、使用後はやがて土に帰りますので、地球に負担をかけません。また、私たち人の体を構成するアミノ酸20種のうち、18種がシルクたんぱく質に含まれていますので、人の体ととても親和性があります。優しくしなやかな肌触り、優れた吸湿・放湿性・保温性による着心地、優雅で美しい光沢やドレープ性。それらは化学繊維には真似できない自然の恵みです。SILK365(シルクサンロクゴ)では、すぐれた繊維素材であるシルクを“日常生活にもっとお使いいただきたい”という思いの中、ご家庭でも簡単にお洗濯ができるイージーケアを実現した生活アイテムや、伝統的な染織技法を活かしたファッションアイテムを開発しています。
5.繰り返しつかえる風呂敷を使用し、プラスチック袋や紙袋などを削減
京都室町は、昔から繊維産地として栄え、現在でも多くの呉服問屋、染色工房、着物作家さまが集積しているエリアで、私たちは、日々お客様へ白生地を直接お届けしています。営業スタッフによる納品時は、繰り返しつかる風呂敷を使用し、プラスチック袋や紙袋などの使用を控えています。白生地一反で1kg弱ですから、重量も相当重くなりますので風呂敷が最適ですし、使用後はコンパクトになり便利です。包むという行為には、慈しむ・ていねいに扱う・大切にするという想いが込められております。常にお客様への感謝と尊敬の気持ちを忘れず、大切な商品をお届けしています。
6.絹文化研究家として、学生たちに絹文化を伝える啓発活動
地球上に80万種といわれる昆虫が存在していて、その中で、ミツバチとお蚕様だけが、人に恩恵をもたらしてくれる有難い生き物です。5000年も前より人と共に生きてきたお蚕様は、もともと「飼う子」から「かいこ」になったといわれ、人の手によって育まれ、成虫となっても命はたった2日間です。私たち人類は、その貴重な繭を惜しみながら頂いてきました。伊と幸では社内の一部を「絹の白生地資料館」としており、京都市指定の博物館連絡協議会加盟施設となっています。家蚕や野蚕の繭の種類、白生地の織物組織、用途別の選び方などお伝えしています。
7.地域未来牽引企業(地場産業、職人、後継者育成)
2020年10月、経済産業省地域未来牽引企業に認定頂きました。白生地はきものの原点であり、京都の地場産業である染色加工は、この白生地が起点となります。作品の素材となる白生地は、Web上のバーチャル展示会にて、一年中365日どこからでもご覧頂けるように対応し、さらに当社の白生地を使って下さる作家様をご紹介する「白生地生かす匠」ページにて、伝統工芸士のこまやかな手仕事や職人技をご案内することで、地域の連携を深め、京都の魅力発信につなげています。
SDGsの観点からも環境に負荷をかけない生分解繊維である絹は、大きな需要と可能性があります。着物からインテリア、生活シーンのあらゆる場面において絹の機能性、審美性を活かした事業活動を通して、地場産業の振興、伝統を駆使した職人たちの技術を多くの方に見て頂くこと機会を生み出します。